▼戦国時代を題材とした映画は合戦シーンが見どころの1つ。黒澤明監督は最高傑作とされる「乱」で1000人以上のエキストラを動員し、迫力ある映像を演出してみせた。燃え落ちる城や疾走する騎馬隊などはすべて本物。壮大なスケールの戦闘風景を可能にしたのは延べ12万人を操った〝世界のクロサワ〟こそだが、40年前は映画製作現場に人材が豊富だったこともある
▼もっとも実際の戦国時代、雑兵同士の戦闘は少なかったもよう。当時の「足軽」は大半が農民で、戦働きは“アルバイト”。怪我などで本業の農作に支障が出ないように戦っていた。少ない報酬は謝絶、農繁期の合戦は逃散。上杉謙信でさえ戦は農閑期に限定するなど、武将は徴兵の労働環境向上に努めたとか。まるで人手不足に直面する現代社会のよう
▼半導体工場の建設が日本各地で相次いでいる。台湾TSMCは2月24日、熊本工場の開所式を行った。他のメーカーも東北や東海などで生産拠点の設立を急ぐ。精密機器関連のラベル印刷会社にとって受注獲得の好機と思うところだが、周辺の企業に聞くと「新工場は雇用条件が格段によく、若者がこぞって就職を希望し、こちらに雇用が回ってこない。人手不足は深刻」と口にする。ラベルを製造する人材がいなければ、新規需要も獲得できない
▼ラベル市場を取り巻く経済状況は依然厳しく、賃金など雇用条件の向上が容易でないのは周知の通り。それでも従業員の作業負担軽減ややりがいの促進など働きやすい環境を整えることは肝要。加えてDXをはじめラベル印刷関連機器・システムの機能を生かし生産効率を高めることで、利益拡大を目指すべき。クロサワ映画のようなスケールの撮影が難しい現在、映画業界がCG技術で映像の奥行き感を表現しているように、ラベル業界もデジタル技術を有効活用すれば成長は見込める。
(2024年3月1日号掲載)