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ハイ・アングル(2023年10月1日号掲載)

▼今夏の商戦は新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、インバウンドの再来で大幅な景気回復が期待されていた。しかし実際は、事前の期待に及ばないとの印象が一般的だ。政府観光局の推計値によると、2023年8月の訪日観光客数は216万人となり、コロナ禍以前の19年同月比で86%にとどまった。今夏は複数の大型台風が日本列島を直撃したためとの分析も。よもや気候変動の影響か

▼もっとも”インバウンド不発”は印象でしかない。観光局推計値では、東南アジアや北米からの訪日人数が19年比で上昇。昨今の円安基調で、旅行先に日本を選択するケースが増加した。日本百貨店協会発表の全国売上高も7月と8月が19年を上回り、特に化粧品や食品などが増勢。インバウンドは確実に発生している。ではコロナ禍以前と比べて何が違うのか。それは「中国人観光客の大幅減少」
▼中国政府の海外団体旅行解禁を得て、日本の小売分野では中国人の爆買いを期待する声があった。しかし現実は、緊迫する台湾情勢や福島原発の処理水海洋放出決定などを理由に、8月の訪日人数は19年比の6割減。また中国の景気動向も持ち直しペースは鈍く、訪日してもかつての爆買いは鳴りを潜める
▼都内の百貨店関係者は「訪日外国人のターゲットは中国から他地域へシフトしつつある。食品は土産物需要が旺盛」とコメント。続けて「日本をイメージさせるパッケージ・ラベルの商品が好まれる傾向。東南アジアの人たちは”雪”が好み。冬場商戦のポイントでは」と予測する
▼原材料やエネルギー価格の上昇による食品、日用品の相次ぐ値上げで国内消費の低迷が懸念される中、訪日外国人の商品購買には継続して大きな期待が。そして購買意欲を喚起させるラベルの役目は少なからずある。あとは気候変動で「雪が降らない」ことがないよう祈るばかり。
(2023年10月1日号掲載)
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