不易流行を理解する場所へ赴く
「不易流行」。松尾芭蕉が「おくのほそ道」で表した概念だ。すなわち「不変を理解しなければ基礎が確立しない。変化を理解しなければ進歩がない」の意。芭蕉は、西行など先達の生涯に共感し東北の景勝地へ赴いたが、先々で目にしたのは栄華の夢の跡と変わらず巡る季節の出来事であり、この概念に至った▼俳句は「五七五」の15音に「季語」を盛り込むのが決まり。これは「不易」。しかし、人の生活は日々変化しており、それに付随して新たな季語も生まれている。例えば「バレンタインデー」は春、「サーフボード」は夏など。これは「流行」。一見、不易と流行は背反して交わらないと思われるが、実際は不易の中に流行があり、流行をて不易を表すように、根幹ではつながっている▼「ラベルはならない」と業界人は口にする。確かに本紙調査では、13年の国内印刷市場が前年比1・3%減だったのに対し、ラベル市場は同1・7%増。なくなるどころか増加している。ラベルは対象物と一体化することにより、使用者に情報を伝達する手軽かつ効果の高いアイテムとして、古来より活用され続けている。この先、減少する可能性はあるだろうが、なくなることはなさそうだ。これぞ「不易」▼一方で、不易のラベルを製造する技術は、時代とともに変化する。粘着ラベルの印刷機はかつて平圧機のみだったが、今ではフレキソやデジタルなどさまざまな方式を活用し、品質・機能・デザインなどの点で著しい進歩を遂げている。他の資機材も同様。これすなわち「流行」。さらに言えば、時代の変化に伴うニーズを正確に理解することで、ラベル印刷会社のビジネス領域は拡大できる。それが別の市場なのか、海外進出なのかは、ラベル企業各社の判断にもよるが、まずは芭蕉の「おくのほそ道」のように、不易流行を理解する場所へ赴くことから始まる。 |