▼8月15日は、日本の終戦記念日。先人たちが語り継いできた戦禍の情景に対して、未来永劫あってはならないことと想いを馳せる。当時の経験を風化させないために、戦前や戦時中後のモノクロ写真をAI(人工知能)技術でカラー化する動きも。写真が色褪せたり破れてしまったりした箇所を復元させ、着色していく。復元作業に際してはAIの技術だけでなく、写真提供者との対話や当時の状況を示す資料、SNSで寄せられた考証なども再現性を高める重要なものという
▼近年のAIは進化を遂げている。従来の画像や音声を認識するツールに加えて、簡易なキーワードで指示出しを行うと、文章や画像、音楽などのコンテンツを生成すことも可能になった。印刷関連団体では「生成AI」がテーマの勉強会を実施するほか、AIが生成したあいさつ文を会合で読み上げるなど、関心の高さがうかがえる
▼ラベル業界で広く知られるAIの活用例は検査装置だ。ラベルの検査結果をAIに学習させて欠陥を分類。またAIで得たビッグデータを基に、複数台の検査装置や入稿・製版・印刷・出荷といった各工程へフィードバックできる。クラウドシステムを手がける会社では検査数や不良率を示し、日ごとの検査内容やどのタイミングで不良が発生したのかを解析。未然に不良を防ぐための開発が進む
▼AIが人の意思決定を脅かしたり、人の仕事を奪ったりする存在という声も有識者から聞こえてくる。しかし、いくらAIが流暢な文章やキレイな画像を生成できたとしても、それらを用いていくのは人の判断によるものだ。時には人に感動を与えることもあり、またラベルを供給する際のロス削減にもつながる。人の経験や磨いてきた技術が色褪せてしまう前に、AIの技術を活用すれば、ラベル業界を後世へとつなげる一歩になりそうだ。
(2023年8月15日号掲載)