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ハイ・アングル(2023年8月1日号掲載)

▼①常にお客様のニーズにあったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供②目標利益を確保して会社を存続発展③社員の生活安定向上――。崇高な経営理念を掲げていたのは、顧客の車両を意図的に傷つけ、修理費を不当に保険会社へ請求していた中古車販売大手のビッグモーター。今後、管轄省庁の調査で全容が明らかになるだろう。経営理念は絵空事か

▼報道によると、同社は事故車両の修理費に厳しいノルマを設定し、達成できない社員の降格人事が横行。事故による修理費は社員の努力で増えるものでなくノルマ自体が理不尽だが、降格を恐れる社員は不正に手を染めた。結果、顧客のニーズ対応を無視し、経営陣の顔色だけを伺う自浄作用の働かない社風が熟成。前述の経営理念で遂行されていたのは②のみ、①と③は形骸化していた
▼経営理念とは、企業の方向性や存在意義を明文化したもの。社員はそれに基づき迷わず業務に従事できる。経営理念のない企業は、経営者が発した”金言”に従い社員が行動する。ただし経営者も人間。言い間違いや失言もあるだろう。結果、社員の誤解、労働意欲減退につながることに。経営理念が明確ならば、社員は経営者の発言と対比させて誤りを認識。時に指摘することで、企業は正常を保つ。経営理念は社員の業務遂行だけでなく、経営者の規律を正す効果もある
▼松下幸之助翁は「企業経営の成否の50%は経営理念の浸透度で決まる。 残りの30%は社員のやる気を引き出す環境、20%は戦略・戦術」との格言を残した。ビッグモーターは経営陣の強権に社内が翻ろうされたが、顧客のニーズ対応という経営理念に準じた社員が不正を告発。同様のケースは過去、他業界の大手で生じている。ラベル関連企業も今回の問題を他山の石ととらえ、企業の成否を左右する経営理念を再考、再認識する必要がある。
(2023年8月1日号掲載)
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