▼飛躍の象徴と言われる卯年。ウサギの島として有名な広島県竹原市の大久野島では、飲食店の新メニュー開発、SNS映えする撮影スポットの整備、島内の移動手段拡充など、観光客の呼び込みに向けた施策に励む。土産物の包装資材を提供する企業も多いラベル業界にとって、観光業の復活は飛躍に向けた大きな一歩となる
▼旧日本軍の化学兵器製造拠点があった名残から“毒ガスの島”との呼び名も持つ大久野島。戦争の爪痕が残る反面、1000羽におよぶウサギを観光の目玉として推し出し、国内外からの関心を集める。負の遺産を受け継ぎながらも、島の新たな魅力を打ち立てたいという関連団体・企業・個人らの活動の賜物といえる
▼地域の伝統や文化をリスペクトしつつ、新たな農産物や加工品を地域振興に活用しようとする動きは各地でみられる。ブランド野菜、国産ワイン、クラフトビール、ゆるキャラグッズ、伝統技術を生かした調理器具など、コロナ禍の活動自粛中に、地元の特徴を再発見してコロナ明けに生かさんと知恵を絞る。言わずもがな、それら商品の魅力を消費者へ伝えるのは、ラベルの使命
▼新たな事業・商材の開発へ乗り出すラベル関連の事例は、紙面でもたびたび紹介してきた。入念な市場調査など下準備は必要だが、営業企画を手がけるラベル業界人は「企画・開発・提案には以前よりも一層のスピード感が求められるようになった。金の卵を長く温めているうちに、時流に合わなくなり腐ってしまうことも」と分析。ラベル業界の海外識者は、既存ブランドオーナーよりも、意欲的でフットワークの軽い商品開発を行う“チャレンジブランド”に対して新技術などを続々提案し、共に成長していくべきとアドバイスを送っている。新たな年が兎の登り坂となるよう、脱兎のごとき行動力が求められる。
(2023年1月15日号掲載)