▼自国開催となった東京2020オリンピック。日本初となる金メダル獲得の快挙を成し遂げた卓球種目の男女混合は記憶に新しい。ダブルスを担った両者が得意とする技といえば、ボールに回転を与える打法“チキータ”だ。ボールの軌道がバナナのような湾曲を描くことから、米国産のバナナブランドに由来してその名が付けられたという
▼相手の意表を突く変幻自在な技と同様に、青果店、スーパーで果物コーナーを物色すると、ブランドや品種ごとさまざまな形状とデザインのラベルが貼られていることに気づく。メロンやマンゴーといった高級品には、きらびやかな箔押し加工が施されていたり、アボカドには食べごろの状態を色で示したりするなど、ラベルが商品の購買意欲をかき立てる
▼「海外で販売されているフルーツのラベルは、青果物とは連想しにくいイラストで楽しませてくれる」。こう語るのは、デザイン会社とタッグを組み、フルーツに貼られたラベルで企画展を主催する収集家だ。少年少女とおぼしきイラストが描かれたエクアドル産バナナのラベルに魅了され集め始めたという。海外の露店を巡るほか、友人から譲り受けるなどして集めたのは約3,000種。コレクションの中には、版ズレや擦れといったレトロな風合いのものもあり、それがデザインの味になるという
▼本来の用途を超えた先にも価値を創出するラベル。コロナ禍では案内表記のフロアステッカーがソーシャルディスタンスを示すほか、QRコードを伴い商品の販促も担うように。働き方の変化や飲料容器からラベルをなくす動きが目立つ。そんな変幻自在な〝時代の変化球〟の軌道を見極め対応するには、自社の概念だけにとらわれずビジネスパートナーとアイデアを出し合うことも必要だろう。ラベル業界の強みに異業種の発想を加え、用途開拓に励みたい。
(2021年9月1日号掲載)