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ハイ・アングル(2024年7月15日号掲載)

▼ラベルは被着体に付帯して情報を伝える役目を担う「価値」により、幅広い分野で活用されてきた経緯がある。しかし情報伝達技術の進歩や環境負荷低減への取り組み、パッケージの低コスト化など、市場ニーズは大きく変化し、ラベルの価値が揺らぐ。その代表例が「ラベルレス」。この言葉には「ラベルに価値なし」との意を端的に含む。ラベルビジネスに携わる企業は脅威と認識すべき

▼ラベル印刷会社への取材で耳にする「付加価値」という言葉。基材の多層化や粘着剤の再剥離・再貼付といった性能、環境対応など多岐にわたる。ただし「付加価値で得る利益」に話が及ぶケースは少ない。RFIDのICチップや加飾の箔材などによる付加価値は材料費として計上しやすいが、ラベル印刷会社の技術ノウハウに基づく付加価値は”ほぼ無償”。短納期や高精度、高品質はラベルに付加した価値であり、高額な設備投資や従業員の労働によって成し得るというのに

▼ラベルのデザインは特に付加価値の計算が難しい。社内にデザイン部門を持つラベル印刷会社の経営者は「事業単体ならば赤字」と話し、ほかの印刷会社もデザイナーが「コンペで負けたら作業が無駄に」と明かす。確かにデザインの提案により顧客の理解を得て受注につながることは、付加価値の利益とも考えられる。だがその際、デザイン制作としての労働コストを”どんぶり勘定”で済ませてはいないか

▼価値を付加した製品でありながら、従来通りの価格、果ては安売りで受注を獲得する行為は、価値そのものを自ら否定することにほかならない。価値あるラベルを製造する立場として、どんぶり勘定からの脱却が肝要。価値創出に要したコストを明確化し、顧客にそれを正確に伝えて理解を得る努力を。価格に見合う製品・サービスこそが付加価値として認識されるのだから。

(2024年7月15日号掲載)

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