主人公のかわいい”こいぬ”が街のあちこちに犬のシールを貼る仕事にいそしむウェブ連載漫画「貼りまわれ!こいぬ」が人気を博している。すでに5巻が書籍化されているほか、7月からは地上波テレビで第2期アニメも放映開始される。本紙は今回、作者のうかうか氏に取材。同作品がシールを題材にした理由やストーリー構想、シールの印象などを尋ねた。
◀作者のうかうか氏
「貼りまわれ!こいぬ」は2020年6月から、秋田書店が運営するウェブコミック配信サイト「Souffle」(https://souffle.life/author/hari-maware-koinu/)で連載。こいぬが街のいたるところへシールを貼り続ける謎の仕事を健気にこなし、ほかの犬たちはそれに翻弄されつつも、新たな気づきやちょっとした幸せに出会う一話完結のストーリーで展開される。
▲秋田書店が運営するウェブサイトで連載中。すでに5巻の書籍化も
作者のうかうか氏に漫画家デビューの経緯を聞いたところ「もともと趣味でSNSなどに犬のイラストをアップしていたところ、秋田書店さんからウェブコミック連載のお仕事をいただくことになりました。連載にあたり、SNSで描いたこいぬを主人公に決定。加えてほかの犬たちと触れ合えるようにと考え、舞台を固定せずいろいろ動きまわれるようなストーリーを目指しました」と話す。
漫画の題材にシールを取り上げた理由については「シールは誰でも好きという印象があり、読者にも受け入れられやすいと感じました。それにコマのすみっこでシールをいっぱい貼っているこいぬの行動だったら、話の展開が思いつきやすいと考えたためです」(うかうか氏)と説明する。
また作品では、こいぬの貼るシールの構造に触れている場面もある。具体的には、剥離紙の裏スリットをはじめ、ホログラム加工、耐水性や再剥離性といった機能などが挙げられる。
もっともシールの印刷・加工技術について、うかうか氏は「全然詳しくないです。でもオリジナルグッズのシールを印刷会社へ発注する際に、さまざまな機能を知ることもありますし、日常で気になったシールの機能をストーリーに反映させています」と答える。
▲主人公の「こいぬ」が貼るシールに「裏スリット」加工も
同作品に関して、秋田書店の編集担当者は「人々の生活を考えさせる”社会派漫画”」と分析する。事実、こいぬがシールを貼る仕事に就いたのは、それまで勤めていた会社が業績悪化で倒産し、急に無職となったため。ほかにも仕事に疲れたサラリーマンや公園をなわばりにする浮浪者、おしゃれに傾倒する若者、何もしたくないニートなどが”擬犬化”されて登場する。
最後にうかうか氏は、シールの印象について「子供はシールが大好きで、あちこちにペタペタ貼りまくりますよね。その欲望は大人になっても残っているのでは。私もタブレットに貼っていますし。それはシールを貼ることにより、自分の持ち物や見る風景が変わって“楽しい気持ちになれるから”だと思うのです」と笑顔で締めくくった。
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テレビアニメ「貼りまわれ!こいぬ」第2期は7月6日㈯から、テレビ東京ほかで放映開始。詳細は同公式サイト(https://harimaware-koinu-anime.com/)。
(2024年7月1日号掲載)