▼酷暑を記録した日数が観測史上最多を更新した8月が過ぎ今年も残り4カ月。日照りが続き一部地域で水不足の不安を抱えたまま長月を迎えた。観光地に人が戻り訪日外国人も回復を示す中、ラベル需要がなかなか上げ潮に乗り切れない。そうこうする間に来年の足音が近づく
▼眼前に迫るは物流の2024年問題。トラックドライバーの時間外労働が来春から上限960時間になり、現在の輸送能力が維持できなくなると目される。先の報道では、心筋梗塞で急逝したトラックドライバーの年間残業時間が1800時間だったという。来春以降輸送能力を保つには、上限960時間としてドライバーの人数を今の2倍、さらに2交代制ともなればトラックの台数も2倍必要ということか
▼国交省が8月25日に発表した「22年度宅配便取扱個数」は、前年度比1.1%増の50億588万個と初の50億個越えに。増員が急務にも関わらず人員が確保できない物流業界。入荷が遅れる、翌日手元に届かなくなる。即納対応、小回りのよさをウリにしてきたラベル印刷会社に戦略転換の判断が迫る
▼問題は輸送能力だけにあらず。物流基盤の維持へ、運送費を上げざるを得ない。それなのにふざけるな、とある印刷人は怒りを露わにする
▼「通販番組の送料無料に1カ月以内は返品無料。あんな悪しき過剰サービスは早晩崩壊する」「3Rに躍起だが、ものづくりはまずリデュースから。しかし過剰品質で『やり直し』、ごみを生む」。過剰品質過剰サービスのために、われわれは高品質低価格の奴隷と化していると嘆く
▼物流業界の疲弊緩和、のみならず脱プラやCO2排出削減、収益構造の改善も。「商慣行の是正」のために印刷業界全体で胸襟を開き、鎖を断ち切るガイドライン策定へ膝を突き合わすのは今だ。疲弊して怒りが枯れ、誇りを失い、産業が干上がってしまう前に。
(2023年9月1日号掲載)