▼先日、未就学児と話したときのこと。親のスマートフォンで動画を見ながら「メタバースやってる?」と一言。コロナ禍で会えない間に一気に背が伸び驚いていたら、最近の子どもは仮想空間(メタバース)の知識もあるのか。答えに窮していると、さらに虚をつく言葉が続く。「楽しいよ、地震とか戦争もないよ」。人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」の話だと後に分かったが、幼子なりに連日報じられる現実の世界に心を痛めていたのかと気づかされて胸を衝く
▼「ゲームの力で日本をアップデートする」。先月27日、金融各社や商社、凸版印刷など10社が「ジャパン・メタバース経済圏」創出に向け基本合意書を締結した。形成していくオープン・メタバース基盤「リュウグウコク」は、都市や国家を天を衝く大巨人に擬人化。さながら異世界RPGのビジュアルだ
▼メタバースにはDXにNFT、フィンテックにデジタルツインと次世代テクノロジーがフル実装。異なるメタバース・プラットフォーム同士の相互運用を可能にし、新しい社会インフラとして国内企業の情報発信やマーケティングを支援、以て消費者のEX(エクスペリエンス・トランスフォーメーション)の実現を目指す▼戦禍に自然災害と国土の復旧に多大な時間を要する場面では、今後メタバースが部分的に産官学の代替機能を担う可能性も少なくない。いずれにしてもゲーミングテクノロジーを活かし、難しいことを面白くゲームのように攻略していく開発はコンテンツ大国・日本の真骨頂だ。CX(顧客体験)を日々追求する、印刷に従事する大人もワクワクしたい
▼さて冒頭の君へ。おじさんは、まず現実の世界から立て直すよ。メタバースを素直に楽しめる世の中にしたいし、お顔や服にもシールをたくさん貼っていたずらして遊んだ、そんな楽しかった時間を未来にもやっぱり遺したいから。
(2023年3月1日号掲載)