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ハイ・アングル(2021年7月15日号掲載)

▼「鱒目仙次(マスメセンジ)」。その名前を目にしたのは四半世紀前。組合関連資料を整理していた時、古い書物の署名にあったと記憶する。後日、当の御仁に名前の意味を尋ねたところ、寄稿を依頼された際『原稿用紙のマス目で1,000文字』との条件だったため、ペンネームにしたらしい。「さしずめ君は“鱒目泥也”だね」と眼鏡の笑顔に対し、内心「“ドロ”の文字はちょっと…」と困惑した当時の思い出

▼御仁は1953年、広告代理店を退職し、家業の印刷会社へ入社した。同社は戦前、アルバム製造業を営んでいたが、東京大空襲で工場を焼失。ラベル印刷業へ事業転換するといった苦境を乗り越えていた。やがて60年、有志とともに「第1回シール・ラベル印刷市場欧米視察団」として世界を巡り、ラベル製造に関する当時の最先端技術を習得。帰国後、その情報を業界内で共有したことが、ラベル市場発展へとつながった
▼御仁に業界人が目指すべき道を尋ねると、笑いながら「年寄りの考えなんて古い」。それでも、の問いに「最新の情報を得て時代の変化を把握し、先を見据えた行動を常に模索するべき。今後、思いもよらぬ凶事に遭遇した場合、行動を模索し続けた経験が生き、成長の道が見いだせる」と語った
▼2年越しのコロナ禍といった“凶事”により、日本経済は厳しい景況が続く。ラベル市場でもこれまで有効だったビジネスモデルが通用しなくなる場面があるだろう。しかし厳しい状況にあっても、業界の先達は時代の変化を見据えて行動し続けたことにより、数々の危機を乗り越えてきた。難局だからこそ情報収集と分析、そして経営につながる行動を。その先に必ず成長がある
▼長野圭一氏、最後の視察団参加者、永眠。御仁に名付けられた鱒目泥也(マスメディア)は、今日もラベル業界の最新情報を求めて行動しています。
(2021年7月15日号掲載)
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