▼マスクして/上司の顔色/読み取れず——先月公表された第一生命保険「サラリーマン川柳」の一句だ。毎年恒例、世相や流行を言葉たくみに織り交ぜて自虐や悲哀を笑いに転じてみせる全国のサラリーマン諸氏の筆は実に見事なもの
▼実際、目以外表情が読み取れないので教える側も伝わっているかを測りかね大変、とはマナー講座を担当する講師の弁。それ以上に、マスク姿だと識別情報が少なすぎて先輩社員の顔が覚えられず「上司の顔色をうかがうことも難しいだろう」と今年の新入社員を気遣う。在宅勤務が長期化すればなおのことだ
▼そんな時の一策として〝マスクにシール〟を勧めたいと講師。「あの上司は小さな娘さんが居るのかな」「一見大人しそうなのに意外と派手な色をチョイスするんだな」「え、あのアニメ好きなんだ」など、色や絵柄の選択から相手の個性や嗜好の一端を詠む。それが識別のトリガー、印象形成の糸口にもなると語る
▼「人の第一印象は3秒で決まる」。メラビアンの法則に基づくと、見た目やしぐさの視覚情報が55%、声や口調の聴覚情報が38%で会話の内容はわずか7%に過ぎない。赤は情熱、青は誠実さ、紫は神秘的、茶は安定と、ならば色が与える印象を戦略的に活用してみる。訪問の機会が限られ画面越しのハジメマシテも増えた新常態で、与えたい印象をどう作り込みビジネスを展開するか。シャツやネクタイの色に加え、マスクを飾るシールの出番もありそうだ
▼社会人/出社したのは/まだ5回(同)。就職という大きなライフステージを迎え、さあ人生本番と踏み出した大きな節目に厄災に見舞われ、きっとたくさんの不安や焦燥を抱え過ごした一年だったろう。あ、そんな顔だったんですね。マスクの下の白い歯を見せてくれる日が、一日も早く訪れますように。白は純粋、希望、未来の象徴だから。
(2021年2月15日号掲載)