紙やフィルムに必要な情報を印刷し、その裏面に粘着剤を塗って容器に貼り付ける“もの”。 これを、ある人は「ラベル」と呼び、またある人は「シール」と呼びます。 では、「ラベル」と「シール」は同じものを指しているのでしょうか。
答 えは「『ラベル』と『シール』は現在、明確に分けられていない」です。 しかし、ラベルとシールはその昔、それぞれ別の役目を果たしていました。
「ラベル」は容器の側面に貼ることによって、その中味が何なのかを示す役割でした。 代表的な例は、ワインやビール、香水などであり、時には、これらの中味のグレードを証明する場合にも役立ちました。 しかし、ラベルと同じ言葉でありながら、外来語として違う意味で認識されてしまったケースがあります。 オランダ語の「レッテル」は、「悪いレッテルをはる」などと、ネガティブな印象を与える意味へと変化していったのです。
一方の「シール」は、容器や手紙などのふたを封印・封かん(シーリング)する役目を果たしていました。 中世ヨーロッパを舞台とした映画で、手紙を封印する際に蝋(ろう)をたらし、乾く前に物々しい印鑑を押す、といったシーンを見たことはないでしょうか。 こうすることで、重要な手紙が差出人以外に開けられていないことを証明するのです。
やがて、扱いの面倒な蝋に変わり、裏面にのりを塗った紙が、封印・封かんに利用されるようになりました。 紙なので当然、表面には必要な情報を印刷することができます。 そして、あらかじめ裏面に粘着剤が塗られた「粘着紙」の発明・普及によって、ラベルとシールは、役割に明確な違いがなくなっていったのです。