▼ロシアとウクライナの紛争に対し、米国が強大な力をもって停戦協議を進めている。米ウクの大統領同士が激しく口論する映像が世界に配信された際は、決裂の危機も否めなかったが、ウクライナは米国の即時停戦案を受け入れた。一方のロシアは現状で停戦案に難色を示し、和平交渉は長期化も。エコノミストの中には、停戦による原油や天然ガスの価格下落に伴う経済の活性化を予測する声もあるが、その道筋は不透明
▼トランプ大統領は強大な力を貿易政策にも行使。カナダやメキシコからの輸入製品に対し追加関税を表明している。さらに日本も対象となる鉄鋼製品とアルミニウムへの関税措置を発動。石破・トランプ首脳会談では、日本が米国内の産業へ投資を行うことで関税は対象外との情報があったが、結果は日本も他地域と同様に。懸念は今後、自動車が関税対象となった場合。日本の基幹産業だけあって周辺産業にダメージを与える
▼そもそも関税は製品の輸入者に支払い義務が生じる。国内生産で代替可能な製品ならば関税を回避できるが、原料や部品などはグローバルサプライチェーンが発達した現代にあって困難。代替できない製品の流通は滞り、インフレの加速で個人消費が減退、企業の設備投資や雇用も停滞する…。米国の景気減速は日本経済、そしてラベル市場にも少なからず影響が及ぶ
▼トランプ政権にはグローバル企業のCEOも参画するが、国に限らず各分野のマーケットリーダーが強大な力を持つのは事実。重要なのは、その力を市場の未来に生かしているか、自らを振り返る行為と考える。行使するその力は、多くの人びとによる理解と支援で得たものであり、社会に果たすべき責任が重いことを自覚すべき。「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。古代ギリシアの格言は現代のビジネスシーンにも当てはまる。
(2025年3月15日号掲載)