▼6月末、全国各地が熱波に襲われ猛暑日を記録した。熱中症対策が呼びかけられる中、在宅勤務の最中にある筆者の自宅エアコンは電源ボタンを押しても沈黙を貫いたまま、10年間にわたる務めを終えた
▼ラベル業界のホットトピックと言えば、エネルギーや原材料価格の高騰。持続可能な業界であるために、各社自助努力では収まりきらない分を値上げという形で吸収せざるを得ない状況に陥っている。コロナ禍から始まったサプライチェーンの混乱と直近のウクライナ情勢、円安など諸要因を背景に価格転嫁の根拠を求めれば値上げもやむなしだが、価格交渉の行く末は
▼テレビ業界の大物司会者にまつわる話。仕事を共にすることとなった新任ディレクターが企画案を練り、熱意を込めて力説すると「そんな熱い気持ちはダメだ」と諭されたという。いわく、熱意だけで物事を推し進めようとするのではなく、冷静に判断した上でおもしろいことを考えるのがディレクターのあるべき姿とのこと
▼仕事を進める中でエモーショナルな部分も必要だろうが、熱意が先行すると短絡的なものの見方に陥る危険性も。なぜそうあるべきか、根拠は。感情を抜きに理路整然と伝えることは、人材育成や技術承継などにも欠かせない。価格交渉もしかり。資機材も電気代も、輸送費も人件費も高騰する中で価格を据え置くのでは先を見据えた持続可能な業界にはなり得ない。熱意は内に秘め、価格の根拠をはっきりと示したい
▼本紙ではラベル業界唯一の専門紙として、常日頃紙面上でラベルの意義と価値を啓発している。熱意だけに頼らない理屈の通った情報発信に務めたいところだが、空調のきかない蒸し風呂では思考もままならない。業界の先を見据えるためにも、冷房装置の値上がりも受け入れる覚悟の上、まずは在宅勤務の環境整備に取り組みたい。
(2022年7月1日号掲載)