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ハイ・アングル(2022年5月1日号掲載)

▼先日行われたアカデミー賞の授賞式でプレゼンターを平手打ちにした俳優ウィル・スミス氏の複数の新作プロジェクトが、延期・キャンセルされている。こうした騒動の原因と真偽の確認は必須としても、ハリウッドをはじめ世界各地で、対象の一部問題や側面を取り上げて不買、販売中止に発展させるキャンセル・カルチャーの是非が議論されている

 
▼キャンセル・カルチャーに関する種々の話題は、ラベル業界にとっても他人事ではない。“ウミガメのストロー”に端を発する廃プラ・脱プラ基調が、「フィルム素材=悪」との誤った認識を招きかねないという懸念はこれまでも度々指摘されてきた。ラベルレス商品も国内では増加の一途をたどり、ラベルの機能性や意匠性、情報発信時に担う力が過小評価されているのではと危惧している
 
▼日々の食卓を眺めてみると、今日では市民権を得ているエリンギや生サーモンといった食材の普及は、生産者・団体らによる啓発活動の賜物。ある関係者にPRのコツを尋ねると「『電子レンジで簡単調理が可能』と不便を解消する点を訴えても、ズボラだと思われたくない心理が働き人は寄ってこない。『電子レンジで栄養を逃がさない』などメリットを押し出すべし。また、生食の商品は『寄生虫の心配がなく安心・安全』ではなく『鮮度が命』というポジティブなイメージを伝えるべきだ」と説き、「マイナスを解消する」よりも「プラスの価値」を前面に掲げることが重要とした
 
▼ラベルの価値は「環境負荷低減に役立つ」「刷り直しに比べれば訂正シールの方が安い」といったマイナスをゼロに戻すことだけでは決してない。販促や装飾、コミュニケーションツールとしての優位性こそが真骨頂。キャンセルの矢面に立たされたとしても、誤解を解く根拠と併せて魅力を伝えることで、名誉を守りたい。
 
(2022年5月1日号掲載)

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