気仙沼水産資源活用研究会(足利宗洋会長)は、気仙沼市と市内の水産関連企業らが共同で運営している団体。競合がいないオンリーワンの高付加価値商品の開発を目指しており、商品ブランド「kesemo」から、化粧品や調味料などを展開している。製造は各社の工場で行っているが、ラベル・パッケージには共通のロゴを配して、ブランドの統一性を確保。同会発足の経緯や商品ラインアップ、特徴などについて取材した。 (大野)
2013年に発足した気仙沼水産資源活用研究会には、同市の水産関連企業23社が参画。同会のブランドである「kesemo」は、太平洋でとれる豊富な水産資源を活用して、高付加価値商品の創造を目的としている。
「気仙沼からもっと」をキーワードに「もっと、本物を。」「もっと、美味しく。」など、気仙沼の魅力を広く伝えられる商品開発を目指し、プロジェクトは始動。水産関連企業同士の横のつながりに、大学・研究機関、デザインやマーケティングの外部専門家、大手企業のOB・OGらが加わり、気仙沼の資源をもとに、現在までに9種のラインアップをそろえる。
サメのコラーゲンや海藻などの成分をもとにした「フカコラーゲンコスメ」シリーズをはじめ、「気仙沼ホヤソース」「気仙沼ホヤ醤油」「三陸まるっとわかめドレッシング ノンオイル」といった商品を展開。県内外の店頭やネットショップで販売されており、いずれも機能性や味わいについて高い評価を得ている。
商品のデザインはそれぞれ異なるが、ラベルや紙器の背面にはすべてkesemoのロゴが印刷されている。また、海を想起させる青色をブランドカラーに定めて、異なる分野の商品でも統一感を演出。こうしたロゴとブランドカラーの相乗効果によって、kesemoのブランド価値・存在感を高めている。
加工技術の応用展開
同会発足の経緯について、副会長を務める㈱石渡商店の代表取締役専務、石渡久師氏は「11年の東日本大震災によって、県内各社からの商品の供給が止まり、操業を再開しても一度失った棚を取り戻すのは難しいことでした。他の地域でも製造できるような商品では価格競争に陥りがちになってしまうので、独創的な商品の開発が求められましたが、一社だけで実現できるものではありません。そこで、産・学・官連携のプロジェクト、気仙沼水産資源活用研究会が立ち上がったのです」と振り返る。
ホヤの殻から繊維を、サメの骨からコンドロイチンを抽出するなど、加盟企業は独自の加工技術に秀でているが、水平展開による新規商品開発の経験には乏しかった。震災以降は働き手が県外へ流出してしまったことも、苦境に拍車をかけた。資金繰りも厳しい中、各社が持つ技術・設備を共有。県外からも駆けつけた商品開発の専門家らの意見を盛り込み、自社の都合・得意分野ばかりを優先させたものではなく「お客さまのニーズを満たす本当に必要とされる商品」(石渡氏)にこだわった。
従来の技術をベースに多様な角度からの意見を合わせた結果、収穫量の大部分を輸出していたホヤは、味覚の根本となる五味すべてを兼ねそろえた点に着目して万能調味料のホヤソースに。類似商品のないものなので、レシピ集を作るなど、PRも一から行った。株式会社KESEMO MARINUSという企業を立ち上げ販売しているコスメシリーズは保湿性が優れていると、当初30〜40代をターゲットにしていたが、発売後幅広い年齢層から反響を得た。いずれも、土産だけではなく、気仙沼市民の普段使いも想定している。
ブランド確立へ
今後も継続して新商品は開発するとのことだが、現在のラインアップについても市場からのフィードバックを受け、中身の色味を生かしたパッケージに改良するなど、リニューアルを準備しているという。
課題について、石渡氏は「ラベルや紙器、直接印刷などを複数の印刷会社さんへ依頼すると、カラーチップで指定をしてもブランドカラーの青色に若干のブレがあるように感じます。時間がたつと、一層顕著に違いが出てきてしまうことも。基材ごとに色ブレは起こってしまうのかもしれませんが、どのような対策が考えられるのか、印刷会社さんからポイントを教えていただければと思います」と話し、印刷のプロならではのノウハウを求める。
将来的にはkesemoの専用工場を立ち上げ「もっと若い人に来てもらいたい」「もっと気仙沼の魅力を伝えたい」とする同会。ブランドの認知と価値向上を目指し、訴求を続けていく。
(2018年7月15日号掲載)