消費者庁は9月1日、食品表示基準における新たな加工食品の原料原産地表示制度を施行。すべての加工食品を対象に、原材料で最も多い生鮮食品にはその「産地」名が、また最も多い加工食品には「製造地」の表示が、それぞれ義務付けられた。ただし、表示方法に関する例外措置もあり、食品分野の関係者などから「分かりづらいのでは」といった声も挙がっている。このような背景から、消費者庁では新制度の普及・啓発を目的に、全国9地域で説明会を開催するほか、ウェブサイドやパンプレットなどによる解説を推進している。
新制度は、原材料や原産地に関して充実した情報を提供することにより、消費者の自主的かつ合理的な加工食品の選択に貢献することが目的。表示の切り替え猶予期間は、2022年3月31日までとなる。
新表示方法に関して、例えば最も多い原材料が豚肉のような生鮮食品で、産地が日本をはじめ米国、一部中国といった3カ国の場合、使用量の多い順に「豚肉(国産、アメリカ産、その他)」と表示。また、最も多い原材料がチョコレートのような加工食品の場合「チョコレート(ベルギー製造)」と表示する(上図)。
なお例外措置として、原材料の産地が2カ国以上で収穫時期などを理由に切り替わる場合、「豚肉(国産又はアメリカ産)」といったように〝又は〟で産地を接続する表示が可能。ただし、時期によって国産ではないケースも生じるため、消費者が購入時に混乱することが想定される。さらに産地に関しても、そばのように日本で製造された加工食品が原材料の場合「そば(国内製造)」と表示するが、原料のソバが国産か、あるいは輸入品か分からない状況にある。
新制度に対して、ある大手メーカー関係者は「例外措置の表示では、消費者に正確な情報を提供できない可能性がある。新制度への対応はこれからだが、誤解を招かない表示方法を模索したい。場合によっては、表示内容の増加に伴って表示スペースの拡大も想定される」と話す。また、別の関係者は「原材料が生鮮食品では、重量の多い産地のうち、2カ国以下の順が入れ替わるケースがあり、そのつど表示内容の変更が発生する。パッケージへの直接印刷よりも、ラベル表示がベターでは」と分析する。
食品大手は、新制度に対応しつつ消費者にも理解しやすい表示方法を実現できる体制が整っているが、一方で中小メーカーからは、最適な表示切り替えに対するアドバイスを求める声も挙がっている。
食品表示アドバイザーの垣田達哉氏は「新制度は『その他』などあいまいな表示内容部分を行政が正確にチェックできるかなどの不安要素もある。食品メーカーはこのような不安要素をなくし、消費者に安心感を与える表示を行うことが重要。そのような中で、ラベル関連企業は、適切な表示内容をアドバイスすることで信頼を獲得し、需要開拓につながるのでは」とコメントしている。
(2017年9月15日号掲載)