▼国際情勢の変化が目まぐるしい。中東やウクライナの戦闘、ルーマニアの大統領選やり直し、隣国の非常戒厳など異常事態が続く。地政学リスクは巡り巡ってラベル業界、ひいてはものづくり産業全般に影響を及ぼす。事態の正確な把握と分析に努めたいところだが、国内の知事選に関わるトピックをはじめ、主要各紙とTVなどオールドメディアの力に陰りがみえる
▼各国の思惑・思想・文化を踏まえ、事象を正確に解説することは一筋縄ではいかない。だからこそ、有事に備えて有識者を待機させておくなど、報道機関には十分な余力の確保が求められる。ものづくり産業全般でも、スケジュールのバッファ、研究・試作品開発など余力は重要。一見無駄と思えるような遊びも、長い目でみれば企業経営に有用との分析は方々でなされている
▼先日開催された「エコプロ2024」では、ラベル印刷会社が市場開拓に向けた提案を行った。モノに情報を付与するラベルを生かして、天災で倒壊した家屋の木材を家具へ生まれ変わらせる復興プロジェクトに際し、素材の来歴を可視化して利用者に安心感を与える展示もみられた。出展者は「安心感というのは、ただちに利益へ結び付くものではない。既存の事業による収益と遊びを許容する社風の上に、チャレンジが成り立っている」とコメント。将来の柱を築くため、余力に基づく種まきの必要性を説いた
▼原材料の高騰と人材不足に直面する中、余力を持つことは厳しいのが現実。他方、異常事態が常態化している昨今、イレギュラーに備えた余力の確保は経営上の必須課題と言える。環境対応の規制など風向きの変化へ対応するため、足元を固めつつも遊びを許す余力を持ちたい。業界に密着し芽吹く前の種からウォッチして、及ばずながら開花を応援する専門紙としての役割を、来る新年も全うしていく。
(2024年12月15日号掲載)