金曜日, 12月 19, 2025
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ハイ・アングル(2025年12月15日号掲載)

▼「一視同仁」。中国唐代を代表する文学者・思想家の韓愈(かんゆ)が著した「原人」の中で、高位の人物に求められる心構えを示した四字熟語である。韓愈は皇帝が誤った政道に進もうとした際、これを厳しく諫めた。結果、皇帝の逆鱗に触れ遠地左遷の憂き目に遭うも、優れた学識により皇帝崩御を経て中央へ復帰した。身分や立場の上下を問わずに相手を尊重し、公正を貫いた先人の言葉は1200年の時を超え、現代の経済社会における取り引きの在り方にも重なる

▼下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」に改正され、2026年1月1日から施行。主な改正点としては、価格改定の協議なく一方的に代金を決定する行為の禁止や、手形払いの禁止、振込手数料に対する委託事業者の負担義務化などが挙げられる。その根幹は、近年の急激な経済環境の変化に即応し、サプライチェーン全体の取引公正化と透明性を確保するため。さらに取適法では公取委に加え、事業所管省庁も指導・助言の権限を持つなど運用への強化が図られている

▼中小企業や個人事業主は価格交渉の際、不利な立場になりがちだった。取適法では旧来の商慣習を見直し、委託事業者と受託事業者が対等な立場のもとに協議を行うことで、事業コスト上昇分の価格転嫁を推進するとしている

▼一方、同法の運用で課題とされるのは、中小企業および個人事業主による改正内容や自社の権利に対する理解。確かに同法は下請法と比べ、適用範囲や解釈が複雑化した部分もある。それらを各企業が正確に把握し公正に協議を行うことで、同法の実効性が発揮される。企業規模や旧来の商慣習による力関係に左右されず対等な立場で交渉を実現させるためにも、同法の理解が肝要だ

▼大国の強権が目立った25年も幕を閉じようとしている。新年が公正と尊重に基づく平穏な世界になることを願う。

(2025年12月15日号掲載)

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