ハイ・アングル　2015年5月1日号

今春２つの話題が日本の空を舞った。まずは「HondaJet（ホンダジェット）」。直径わずか５４㌢というエンジンを主翼の上に配する、全長１３㍍の超小型ビジネスジェットだ。本田宗一郎氏の自伝によると、小学二年の秋、学校を無断で休み親の自転車を拝借して浜松の歩兵連隊へ飛行機を見に行ったという。氏の宿願だったと察するに容易な同機は、現在国内の空港を巡航中。かつて本田少年が受けた衝撃を、子供はもちろん〝昔の少年〟も受け取るだろう▼次いで小型無人機「ドローン」。首相官邸の屋上で放射性物質を搭載したまま２週間も放置されたと分かり、新たな脅威の対象として危機管理の重要性をつきつけた。しかし、利器にもなり得る。今まで見たことのないアングルからの景色を映してくれるだけでなく、危険な解体現場や広大な農場の育成管理、空輸から軍需用途まで潜在市場は計り知れない▼いずれもこれまでにない「高度」で新たなマーケットを創り出す。普段見る世界が変わると、そこでの気づきも変わるというもの。昨年こんなラベルに出会った▼トイレ用洗剤を新たに売り出す大手メーカー。商品ラベルとは別に、容器のネック部分に高輝度の蒸着フィルムラベルを貼付する。この「ミラーラベル」が、腰を曲げて便器に顔を近づけなくともフチ裏の汚れを捉える狙いだ。印刷品質やデザイン性とは一線を画する価値の視点から、類のないラベルを創り出した。言わばこれも「高さ」という視点が生んだ事例と言えよう▼常に事象を冷静に捉え瞰する姿勢を、という趣意を込めるのがこの『ハイ・アングル』。途中名称が変わるも次回で１１００回目を迎える。ユーモアも危機もシニカルも交え伝えるを本分とするこの１節。これからもペンに羽を与え東奔西走し新たな気づきを求め、業界浮上を導く視点の高さにこだわって専心する所存だ。