「唯一分かるのは、今と異なること」。世界で初めて〝マネジメント〟という概念を体系的に確立したドラッカーは「未来」をそのように説明した。経営学の巨人をてしても、ビジネスの未来予測は難しい。それでも日々の事業活動の中で、これまでとは異なる時代の変化を実感する瞬間がある。それは技術進歩か、あるいは新たな顧客ニーズか。事象はさまざまなれど、いずれもが未来予測のヒントにつながるのは事実▼ラベル市場はかつて「地場産業」と称された。ラベル印刷会社は各地域に根付き、地元商品の〝顔〟を、業界全体で培った技術力で製造する事業を営んでいた。やがて情報伝達技術や国内交通網の発達に伴い、他地域へ展開する印刷会社が現れた。きっかけは、大量・高速印刷が可能な印刷機などの技術発展か、あるいは有力顧客の大都市集中化か。確かなのは、今までと異なる変化を理解し、ビジネス判断を下したラベル印刷会社が業績を大きく伸ばしたこと▼かつて10兆円産業をった印刷市場は今、電子メディアなどの台頭で厳しい状況にある。一方〝情物一致〟の原則に付随するラベルの市場は、横ばいから微増で推移しており、他印刷業界から羨望のまなざしを受ける。しかし、今のラベル産業が未来、どのように変化するか、知るもない。顧客の生産拠点海外移転がさらに進み、日本で消費されるラベルの多くが海外で製造される可能性もある。かつて国内で他地域へ商圏を拡大したケースと同様、海外進出を果たすラベル印刷会社も増えている▼本紙は今号で創刊1100号を迎えた。往時と比べて掲載する企業名は横文字が多くなり、印刷技術も職人の手の届かない領域へ向かっている。それでも、最新情報を掲載し続けることで、ラベル産業の発展に貢献するといった本紙の編集方針は、今も、そして未来も変わらない。 |