▼ウクライナ南部へルソン州に位置する水力発電所のダムが決壊。深刻な洪水被害をもたらした。周辺住民の家屋一帯が水に浸かってしまい、報道を通じて見るに堪えがたい現地の惨状は心を痛めるばかり。決壊の原因を国際刑事裁判所が調査しているが、ロシア軍による破壊工作ともなればあってはならないことだ
▼新型コロナウイルス感染症拡大に加えて、両国間の争いもラベル業界の経済動向に影響を与えていると言わざるを得ない。それでもラベルを貼って復興の意を示すことはできる
▼日本のある酒造会社では、青と黄色のウクライナカラーのラベルをまとう日本酒を製造。ラベルを眺めて想いを馳せ、杯を交わす日本酒らしい提案と言えよう。またウクライナ産のハチミツを扱う会社でも、数量限定で商品を企画。ラベルにウクライナの国旗と国名をあしらい、売り上げの一部を寄付に充てた。ラベルという共通点が業界の垣根を越えて連鎖する。戦禍を見守る中で、ラベルを通じて復興への願いを届けたい
▼ウクライナは世界有数の養蜂大国。主な原料にはヒマワリの花の蜜が使われている。またヒマワリは、同国の国花として象徴するシンボルだ。SNSではウクライナに留学経験のある学生の企画で、描いたヒマワリの絵を投稿し合うツイートが話題を呼んだ。酒造会社でも、ヒマワリの絵をラベルデザインに採用。収益金を団体へ寄付する活動もみられた
▼今月18日に控える「父の日」。米国発祥という記念日が日本にも浸透した。日本では、感謝の気持ちを込めてヒマワリの花を贈ったり、ギフトに黄色のリボンを付けたりすることも。そのほかヒマワリをモチーフとするシール商材も店舗に並ぶ。ラベルが戦時国の誰かの気持ちに寄り添えると信じ、太陽の方を向いて育つヒマワリのように、いつの日か海を越えて同じ太陽を笑顔で見たい。
(2023年6月15日号掲載)