▼野球のWBCで日本代表が前回王者の米国を破り、見事優勝を飾った。テレビは連日、試合の動向と選手たちの活躍を報道。決勝で“二刀流”の大谷翔平投手が最後の打者を三振で締めくくり、メンバーと喜びを分かち合うシーンが繰り返し映し出されている。野球に対する国民の関心も最高潮。野球少年たちはプロ野球やメジャーリーグ、そして未来の侍ジャパンを目指すのだろう
▼日本代表の優勝で球界は安泰と思うところだが、大きな懸念も。それは「少子化」に伴う野球人口の急激な減少。例を挙げると、神奈川県公立中学・高校で野球部へ入部した生徒数は直近10年間で43%減に。野球指導者は「教員の働き方改革で練習日も制約される。現状が続けば球界の未来は暗い」と危機感を募らせる
▼人口減少は球界だけの問題ではない。政府は17年後の2040年、労働人口を約20%減の5200万人と試算する。また大手シンクタンクは物流分野への影響を指摘。7年後の30年には、国内で35%の荷物が配送不能と分析する。ラベル市場にとっても憂慮すべき未来が迫る
▼むろんラベル製造の現場も人手不足対策は喫緊の課題。ラベル業界はこれまで、オペレーターの技術力を基盤に高品質・高付加価値、短納期へのニーズ対応を可能にしてきた。それは従業員の安定雇用によって成り立ってきたのも事実
▼ラベル印刷会社への就労が減り、海外技術研修生も円安で期待できない今後を見据え、従来と異なる生産現場への改革が肝要だ。作業の効率化を実現するスキルレスな機器の活用は有効な手段の1つ。オペレーターも製造に特化したタイプから、マルチタスクに対応するタイプへ変化する可能性があるのでは。ラベル製造技術に長けたオペレーターが第一線で提案型営業もこなす”二刀流”。そんな職人が活躍する業界の未来を見てみたい。
(2023年4月1日号掲載)