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ハイ・アングル(2022年10月15日号掲載)

▼地面に貼られたシールに目が止まる。何だろう、おまけシールが街を汚しているのか。視線を先にやると、Gの字を付したシールは等間隔に貼られ、最後は矢印も加わる。Gの正体はガス管の位置を、矢印はガス栓を示すシールだ。歩道に目を落とすと、ガスに電話線と埋設された都市インフラをシールが示している

▼先日、今年度の“Gマーク”ことグッドデザイン賞の受賞作品が決定。この一つに、金沢工業大学が開発した音声情報提供システム「コード化点字ブロック」が選ばれた。システム構成は、スマホと5×5の突起を配した街の点字ブロック。読み取り方向を示す矢印のシールと、突起の周囲を囲む環状のシールを貼って、ブロックを“可変コード化”する。突起1つ1つに仮想の数字が割り当てられ、マークされた突起の数字を合算、合計値と紐づけられた情報を読みあげる。1枚の点字ブロックで実に最大1.3億通り可変コード化するという
▼本紙が3年前に取材した際、開発者の松井くにお教授に勧められて記者も体験。当時は、腰につけたカメラが黒いシールで覆う点字ブロックの突起を捕捉。AIによる画像認識処理でスティック型PCに格納した音声を再生し、イヤホンで位置情報を得るプロト機だった
▼松下幸之助はかつて、婦人を解放したと語ったという。炊飯器はかまどから、洗濯機は風呂場から、掃除機は雑巾から。電化製品が当時の婦人を家事から解放、後の社会進出の一助ともなった
▼既設の点字ブロックにシステム実装すれば、スマホと音声情報は視覚障害者以外に健常者や訪日外国人も不安から解放し街歩きを後押しする。1枚のシールで何を変え、誰を幸せにできるか。10月15日、今日は「国際白杖の日」。誰もが等しく自由に秋を謳歌できる世界へ、一歩踏み出す足元に願わくばシールが力強く寄り添っていますように。
(2022年10月15日号掲載)
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