リコーは、独自の印刷技術を活用した「抗菌/抗ウイルス構造膜の印刷」を開発(2020年12月15日号既報)。薬剤不使用で、菌やウイルスを不活性化できる技術として注目されている。
同技術はリコー独自の印刷ソリューションによって、抗菌/抗ウイルス機能を備えた微細な構造膜を印刷するもの。化学物質や銀・胴などの薬剤成分を使用していない点が特徴で、多彩な印刷対象の表面に抗菌/抗ウイルス機能を付与できる。同社は、①物理的作用の抗菌効果②インクジェット(IJ)印刷で簡易作製可能③部分印刷が可能④使用可能な材料種が豊富、といった特徴を挙げている。
このうち①に関して、セミやトンボの羽は「ナノピラー構造」と呼ばれる微細な突起形状を備えており、抗菌作用が認められている。菌がナノピラー構造に付着すると、吸着力によって細菌の細胞外殻が伸長し、破断限界を超えると細胞外殻が破壊され不活性化するといった原理。同社はこうした構造を参考に、より抗菌性を高めた「リコー構造」を開発。「ISO22196:2007」に準じた試験では、黄色ブドウ球菌が99.9%以上不活性化した。微細構造のサイズを調整することで、インフルエンザウイルスにも有効とし「ISO21072:2019」に沿った試験で同様の結果を記録。微細構造が持続する限り、継続して効果を発揮する。
②について、膜を形成する印刷は同社製の既存プリンタで可能となっており、カスタマイズ機能として将来の実装を予定。IJ印刷で量産できるため、コストを抑えて展開できる。
安全性とコスト、製造方法の観点から食品や化粧品、日用品などのラベル・パッケージへの応用も望めるとし、用途開拓と材料の検証を進行。同技術を活用した商品は「SIAA」マークの表示にも対応でき、数年以内の発売を目標としている。
〈写真〉展示会ではサンプルの展示も行われ反響を得た
(2021年2月15日号掲載)