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ハイ・アングル 2015年8月1日号

「あんなオモチャみたいなもの使えない」と切り捨てられたのをよく覚えている。家業の写真店を手伝っていた母に20年前、デジタルカメラの買い時を相談したときの話だ。まだ取るに足りない画質だったからだろうが、その数年後にプロ用の一眼レフが登場。ほどなく普及機も現れ、記者という職業柄入手せざるを得なくなった。「じゃあ、うちから買いなさい。安くしとくから」。あっさり前言を翻した彼女は、それでもどこかばつが悪そうだった▼アナログ写真という産業に育ててもらったわが身だが、その“恩人”は劇的な速さで進化したデジタル技術に押され、ほぼ姿を消してしまった。かつて写真店の棚をにぎわせたフィルムやカメラの製造元は事業を転換、軒並みデジタル印刷機材を扱うようになっている。最新技術を解説する取材相手から「昔は写真フィルムの営業をしていました」と聞き、不思議な縁と時代のうねりを感じることもある▼液体トナー方式の先がけ「E—Print1000」が発表されたのは1993年。考案者のベニー・ランダ氏は若いころ、父親が経営する店の奥で写真スタジオと暗室を切り盛りしていた。カメラ・フィルムとデジタル印刷機はまったく別の製品だが、ともに画像と精密機器関連のノウハウが求められ、技術的に通じる部分もある。盛衰が交差するなか、過去の栄光を捨てる決断と、蓄積を新領域に生かす挑戦が数知れずあったはずだ▼「依然堅調を保つラベル業界にも、いつ転機が訪れるか分からない」と、新たな事業基盤の構築を訴える若手の声にうなずく経営者は少なくないだろう。印刷加工を応用したデコレーションテープの製造、ラベルの表示領域を拡張するアプリの提案など、先駆的な取り組みも実を結びつつある。今ある仕事の近くに、大きく化ける“オモチャ”が埋もれていないだろうか。

 
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