▼ホンダと日産が昨年末に発表した経営統合の協議が打ち切られた。協議は当初、持ち株会社の設立と、両社がその傘下となることで推進。しかしホンダが日産に完全子会社化を打診したところ、理解が得られず破談に。なんとも急速な結果となったが”社風の違い”から協議難航を予測する声もあった
ホンダは創業時から自由な気風で、事業に対する意見が現場からも挙がる「ボトムアップ型」。一方の日産は経営陣のリーダーシップに基づき、結束を固めて事業を推進する気風の「トップダウン型」とされてきた。世界シェア3位、電気自動車など新技術の開発力強化、生産体制の効率化といったメリットばかり強調されたが、水と油の経営スタイルは1つにならなかった
▼ラベル業界でもM&Aの件数が増加しており、19年以降の5年間で80件に。生産性の向上や事業領域の拡大を目的としたM&Aは有効なビジネス戦略とされる。ただし重要なのはM&Aに至るまで、ではなく「統合後」。複雑化した組織を軌道に乗せるためには、従業員の声に耳を傾け、部門の再編を慎重に進めるべき。拙速な経営方針の転換は企業の弱体化につながる
▼M&Aには時間とコストがいる…そこでもう1つの戦略に挙げられるのが、経営権の移行がない「企業連携」。企業間で双方の強みを共有することにより、安定した事業を推進できる。具体的には設備や技術の流用、営業範囲の補完など。ラベル業界はかつて「セルフラベル特許」を組合で共有していた経緯があり、気風的に適する。事実、すでに取り組んでいる企業も
▼孫子の故事に由来する「呉越同舟」のように、敵同士が重大な危機に直面して協力することは、現代のビジネスシーンにもあり得る。ラベル業界にとってその危機こそが、人手不足や原材料価格の高騰では。かつてのライバルは強力な味方になる。
(2025年2月15日号掲載)