▼7364万人。この数字は国連が算出した2100年の日本人口予測だ。22年の1億2322万人から約80年後には、40%減少する。年齢層別人口比率では39%が65歳以上の高齢者で、14歳以下はわずか11%に。なおこの数値は出生率を「1.67人」で算出したもの。厚生省が22年に発表した「1.27人」で計算した場合、さらに少なくなる。ある識者は現状を「静かな有事」と称する
▼岸田内閣はこのほど「異次元の少子化対策」を打ち出した。児童手当や学童・病児保育、育児休業など働き方改革の三本柱で出生率を反転させる方針。だが、共働き世帯の増加や女性の社会進出、情報伝達手段の高度化など社会構造が変化を遂げる中、これまでの固定観念に基づく施策で効果が得られるのか
▼日本の労働人口が半分となる80年後の未来、ラベルの製造現場は人手不足がさらに深刻化すると予想される。ラベル産業は“職人”の技術によって成長してきたが、人手が足らない生産現場では技術承継が困難に。それを見据え、印刷機メーカーはスキルレス化を実現する機能を開発。昨秋の「IGAS2022」でオペレーターの技術を補う印刷機やシステムが多数提案された。さらに印刷会社も女性オペレーターの採用や作業の完全マニュアル化、自動化促進などの対応を図る。今後、技術の平準化が進むだろう
▼「技術の平準化は企業間の価格競争を招く」と危ぐする声がある。その可能性は否定できないが、限られた人材の中で生産活動を行い、企業を存続させるにはスキルに依存しない手段も選択肢に入れるべき。もはや「技術=上手に印刷すること」という固定観念を変える段階に差し掛かっている。人口減少を迎える日本市場でラベル需要を維持するためにも、技術という考え方を「新製品の開発」「新市場の開拓」へ置き換える必要があるように思われる。
(2023年2月1日号掲載)