ダイセルでは現在、環境に配慮したプラスチックやフィルムなどの原料に活用される「酢酸セルロース」の事業を推進。近年の環境対応型製品に対する需要の高まりを受け、生分解しやすい分子構造を見いだすことにより、海洋中での生分解速度を高めた新製品を開発した。幅広い用途展開の中で、ラベルの表面基材としての活用も期待される。
酢酸セルロースは、非食用植物由来の「セルロース」と食酢の主成分「酢酸」を原料に製造される素材。使用後は専用コンポストや土壌だけでなく海洋中でも、最終的に水とCO2へ生分解される。一般的なプラスチックやフィルムと同様の加工が可能で、包装容器や繊維、保護フィルム、化粧品などの原料として活用されている。
新製品は、従来の加工品質などを保ちつつ、海洋中での生分解性速度を向上。同社は「研究によると、従来品と比較して約2倍近い速度で分解するとのデータが得られた」と説明する。
また同社はこのほど、石灰石を原料の一部に採用する環境配慮型素材「LIMEX」を展開する㈱TBM(東京都中央区銀座、山﨑敦義社長、☎03・3538・6777)とともに、酢酸セルロースと石灰石を組み合わせた新素材「海洋生分解性LIMEX(仮称)」の開発に向けた取り組みをスタート。石油由来原料の使用削減と、廃プラ・フィルムによる海洋汚染の抑制に貢献する新素材として、2020年度中の採用を目標に掲げる。
ダイセルでは「数カ月から数年で分解される酢酸セルロースを既存のプラスチックやフィルムの代替とすることで、海洋汚染の解決策になり得る。ラベルの表面基材にも活用できると認識しており、今後、新製品の用途開拓を進め、将来的に年間数千㌧以上の生産を目指す」と話している。
(2020年3月15日号掲載)