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ハイ・アングル 2014年1月15日号

”変える”べきは戦う武器か舞台か

 

 年末年始を京都で過ごした。名刹古刹から路地のお稲荷さんまでどこも風景に馴染み、除夜の鐘の音が都の夜空に凛と響いて心が浄化され厳かな心持になる。意中の寺院をハシゴすべく街を歩くと、本当に多くの外国人観光客とすれ違う▼「今は通行規制中」と八坂神社前、「除夜の鐘の拝観はすでに終了」と知恩院。午前0時が近づき拡声器越しの警察官の声が強まる。そんな懸命の日本語の案内は彼らに届かず、人波に従い初詣の長い行列に加わる▼日本政府観光局によると、12年の訪日外国人旅行者は約836万人。このうちおよそ76%がアジア圏で、国別トップ10でも過半数を占める。中韓台香港以外ではタイが6位、シンガポールが9位にランクインするほかマレーシアも12位、インドネシアは14位ながら伸び率63%と急進。日本屈指の観光地でもまだ英語表示が十分でない中、これらASEAN諸国をにら

んだおもてなしの再構築は急務だ▼街を歩くお供は、今やガイドブックから主役の座はスマートフォンやタブレット端末へ。外国人ばかりか日本人も利器を手に洛北、洛中と忙しい。辞書にも地図にも翻訳機にもなるデジタルツールに対して印刷の出る幕は…という議論は止そう。どちらにもそれぞれの特性があり、活い きる場面や役割も別。乗車したタクシーで出会った自作であろう使い込まれた「指さし意思表示シート」に、分かり合いたいという人間の根源的欲求、職業への責務、おもてなしの真髄を見る▼印刷もラベルも、顧客にとっては〝目的地〟に着くためのいち手段。相手の〝旅行先〟が変わることも、印刷に取って変わる〝交通手段〟の登場も避けられはしない。変わるべきは相手か自分か、変えるべきは戦う武器か舞台か。「革新」と「停滞」の両方の意味を含む今年の干支、甲きのえうま午。勝者は神のみぞ知る、ではいられない。旅は続く。

 

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