印刷産業青年連絡協議会(印青連・岩村貴成会長)は8月20日、所属11団体の生産現場を視察する工場見学会「移動サロン」を開催。毎年夏に実施される恒例のイベントに、青年印刷人ら約100人が参加した。
今回、大型バス2台に分乗して向かったのは埼玉県戸田市の3社。はじめに、東京都製紙原料協同組合所属の(株)大久保を訪問した。
地面にスケールを埋設しトラックごと古紙の積載量を測る荷受け工程から、禁忌品を除き品種別に分別する選別工程、コンベア搬送された古紙が大型梱包機で1トンの塊になる圧縮梱包工程までの流れを順に見学。ヤードの一画には、出張断裁を行う同社のシュレッダー搭載車が駐車しており、徹底管理された機密文書処理の手順を披露した。
また会議室では、大久保薫常務が古紙リサイクルできるもの・できないものに分別するクイズを出題。用意された写真、剥離紙、鶏卵パック、粉洗剤の箱など10数点は「実はすべてリサイクル不可」(同)。なぜ再利用できないのかを、素材ごとの特性と生じる品質トラブルに触れて解説した。
続いて、東京都製本工業組合所属の(株)善新堂へ。石坂善久社長が歓迎のあいさつを述べ、会社概要と事業内容を紹介した後、班に分かれて工場内を見学した。
並製本書籍専業の同社が得意とするのがコミック製本。工場の製本ラインでは最新のコミック本が次々と生み出され、見覚えのある作品を目にしては興奮しきりの様子だった。善新堂の一番の特長が、新書判192ページ専用の「一貫機」。巨大なロール給紙装置から両面1色の輪転機を経てスリット、丁合、バインダー、断裁、梱包を経て〝ジャンボロールがコミックになって出荷される〟一貫生産ラインを、ため息と共に見守った。
最後に訪れたのは、東京都印刷工業組合に所属する(株)ウエマツ。日印産連のGP認定工場で外観も近代的な2010年竣工の戸田工場は、18台125胴と国内屈指のオフセット枚葉機を擁する。一日平均1300版を出力するプリプレスルームをはじめ、用紙のシーズニングも兼ねた660パレットを収容する巨大なラック倉庫、18台の印刷機と、地上4階の各フロアをくまなく披露した。
工場内で目に留まったのが『異次元』の言葉。見学後の質疑応答でこれを問われた福田浩志社長は、現在推進中の経営計画の主題として「例えば『生産を5%伸ばせ』と言えば現場は伸ばすための工夫をするだろう。しかし『現在の倍作る方法を考えよ』では、実現するための発想はまったく異なってくる。常識とは別の次元、現在の延長戦上ではないまったく異なる発想を促したもの」と意図を説明した。印刷はまだまだ現場でけられる、福田社長は一同にエールを送った。
(2016年9月1日号掲載)