金曜日, 11月 7, 2025
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ハイ・アングル(2025年11月1日号掲載)

▼盲導犬が歩く会場。そこでは白杖を必要とする人に晴眼者が付き添う。駅から会場まで、蛍光色のビブスを着た学生ボランティアが何度も往復して随行する。人と人、人と盲導犬がいたわり合うやさしい光景に年一度出会えるのが、視覚障害者に向けた福祉機器や支援施策が集う「サイトワールド」だ

▼会場では印刷加工技術や粘着製品も情報伝達の一翼を担う。1枚から貼れて指先から情報を届ける点字ライターに白杖の先端を導くレールの付いた敷設テープ、ロービジョンや弱視の見え方を知る型抜きから組み立てる簡易メガネも。ほかにも、富嶽三十六景神奈川沖浪裏をUVニスで盛り上げ、躍動感のある高波や富士山を触って〝視る〟ための触知絵画。視覚障害者に浮世絵の楽しさを届ける印刷会社の意欲作だ

▼デジタル化は時に善し悪し。タブレットが主流となり電子デバイスを起点としたインフラが普及して、指先はボタンや突起という情報の入り口が見つけられない。反面、ICTがこれまで以上に解像度の高い情報を音声化して届ける。カメラとAIが周囲の障害物の位置や目の前に何があるのかを音声で伝え、触覚以外の情報で視覚障害者を支えるツールが生まれ始める

▼画像認識とAIで意匠や図案、文字情報を解析して読み上げる新技術。視覚障害者にもラベルに記された情報が伝わり、ラベルが彼らにとっても必要な情報媒体となる日はきっとくる

▼等しく情報を得ることで選択ができ、次の行動を促す。人とICT、印刷とテクノロジーがいたわり合い合理的配慮が高度化する世界、何と素晴らしいことか。「目が見えないことは不便だけど、かといって不幸ではない」。いつか耳にした当事者の声が、情報伝達とは何か・印刷は何ができるかという捉え直しに導く。11月1日、今日は「点字の日」。指に、カメラに、希望は視えているか。

(2025年11月1日号掲載)

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