▼「メディアユニバーサルデザイン(MUD)」が全日本印刷工業組合連合会の正式事業となって今年で20年目を迎えた。当初は色覚バリアフリーや高齢者配慮の印刷物研究から出発。20年を経てこれまでの「見える・分かる」から、新たに「動ける」を印刷物に組み込むと提起する
▼印刷物のMUDは従来、視覚中心の感覚的な働きかけに力点を置いてきた。そこに人を動かすという情報による行動変容を狙う「行動設計」の組み込みを図る。新たな視座で過去を見つめ直すと「再評価できる作品がある」。先月開催された「ペーパーサミットジャパン」の講演で、MUD協会の浦久保康裕理事長は説明する
▼「MUDコンペティション」の第9回大賞作品が、大阪シーリング印刷の「避難所サポートセット」だ。救護室やごみ置き場を示す案内シールに帯状の立ち入り禁止テープ、矢印シールにスタッフシール。どれもはさみ不要で貼って剥がせ、混沌とする避難所で場所や動線を明確化して行動を促す。当時は色覚配慮や着想を評価したが、人を動かす行動設計を実装した作品と新たな尺度で評価した
▼7月28日、最大震度7を記録した令和8年熊本地震が発生した。8月に入り九州地方に体温を越える酷暑日の到来が予想される中、避難生活や炎天下での復旧作業が待つ。気象庁の命名地震で近年盛夏の発生事案は少なく、肉体・精神的疲労で不測の事態も予測される。印刷に何ができるのか
▼行動設計を実装した例に、今号で熱中症予防を視覚的に示すステッカーを紹介。ほかにもわれわれは食中毒の発生を抑制するシール、仮設トイレのにおいを軽減する漆喰シート、熱射を和らげるUVカットフィルム、身体を冷やす汗拭きシートも。姿は小さくとも行動する人を支え、行動できない人にも寄り添うわれわれの知恵が、大きな祈りとともに被災地へ届きますよう。
(2026年8月1日号掲載)





