▼日本国民の約8割がスマートフォンを保有する時代。スケジュール管理を行うスマホアプリの普及で、手帳業界も近年はデジタル化の影響を受ける。新年のあいさつで、表紙に会社名が箔押しされたビジネス手帳を渡された時代が遠くなる
▼通常、手帳の需要は年初に加え新年度・新学期が始まる春先まで。しかし「いつもなら止まっている機械が毎日稼働している」とは、PVCで手帳カバーを製造するメーカーの話。ラインを動かすほどの新規需要、それが「シール手帳」だ
▼見逃せないのは、本来手帳を必要としない層を取り込みゼロからイチを生んだ点。中にはシール手帳は6冊目、とシール愛を語る小学生も。シールの収集活動こと“シル活”なる新語が生まれ大流行中だ
▼6月に東京・有明で開催された「文具女子博トーキョー」。粘着製品はひいき目なしにも高い人気だ。ブームの立役者でもある樹脂盛りシールも少なくないが、そこは入場料を支払い買い物に訪れる来場者。固定の推しブランドは抑えつつ、玄人は流行を追わず次の獲物を目利きする
▼抒情的な柄のマステに繊細なカッティングのレースシール。ラベル印刷会社のブースが鈴なり状態で実に頼もしい。中には友人と貼って剥がして何度も交換してもらうための支援技術も。シールを貼ってストックする手帳のリーフを剥離紙製とした着眼点はプロの仕業だ
▼相手が興味を持つもの・人と違うものを探し、作品集を見せ合い、交渉交換して自分だけの手帳を作りあげる。スマホ全盛のデジタル時代に、アナログなシール交換が人と人を結ぶ事実が何とも誇らしい。さりとて流行はいつか終わるもの。それでもその日まで「シールって楽しい!」と、将来の需要家を英才教育するのは今だ。どうか多くの人にわれわれの作品が見つかり、シール手帳にたくさん収蔵されますように。
(2026年7月1日号掲載)




