大航海時代、マルコ・ポーロがアジア地域で見聞きした情報を編した「東方見聞録」に、〝黄金の国ジパング〟は「莫大な金を算出する極東の孤島。宮殿や民家は財宝で彩られ、調度品には優れた細工が施されている。人は礼儀正しくも〝共食い〟の習慣あり」と記されている。現代のジパング人としては、眉をひそめたくなる一節もあるが、そもそもジパングとは、当時の船乗りたちにとって果てなき大海原へ船を漕ぎ出す〝夢の存在〟だったのかも▼15年前、フレキソ印刷機販売のために来日した欧州メーカー担当者の話を思い出す。日本のラベル市場は世界に類を見ない高レベルの技術力を誇り、ラベルの需要量も単独で北米や西欧に負けないとされていた。「そんな夢の市場に1台でも納品できたら、欧州でセールストークになる」。その姿は大航海時代の船乗りと被る▼情報・物流でグローバル化が進む現代社会にあって、海外進出はもはやラベル業界でも夢の話ではない。サプライヤーはもとより、ラベル印刷会社もアジア地域に現地工場を設け、日系企業を中心に受注を獲得する。今年は、リンテックが欧州市場へ本格参入。また、岩田レーベルもドイツに支社を設立し、独自のラベル開発技術を武器に、現地の医療・医薬品市場へPR展開する。世界との距離が縮まれば、ジパングから世界へ船を漕ぎ出すケースが増えるのも必定▼全日シール連の会長を5期10年務めた小宮山光男氏が退任し、田中浩一氏が新会長に就任した。L9の設立など、世界と日本のラベル業界を近付けることに尽力した小宮山体制だが、それを引き継ぐ田中新会長は「組合員減少の克服」という難題に直面する。組合員の技術開発力を伸ばしつつ新市場を開拓し、組合と業界全体の活性化に対する取り組みが急務だ。価格競争激化だけの業界内による〝共食い〟は御免被りたい。 |