25年前に渡英し、薬事翻訳業の傍らTullis Russell Coatersに勤務するガードナー・恵子が、消費者の視点からイギリスにおけるラベルの使用例と包装について、3回にわたり報告する。第2回は、クリスマスシーズンの街で気づいたことを報告する。
イギリスでのクリスマスの過ごし方は、日本のお正月に似た感がある。年間の一大行事で、大抵は家族で集まったり親戚や友達を訪問したりする。またとても食べきれない量のご馳走を用意して、朝からワインなど開ける。そのため、クリスマスの準備には気合が入り、お店にとっては重要な稼ぎ時だ。街のイルミネーションがついてクリスマスムードが本格化するのは12月に入ってからだが、2カ月以上前からクリスマス向け商品が店頭に顔を出し始め、10月末のハロウィーンを過ぎると各小売りはクリスマス商戦全盛となる。天候もパッとせず一日中薄暗いこの時期、クリスマスデコレーションに元気付けられる。
店舗装飾として、ウインドーにステッカーを貼る店舗は多いが、気泡が入ってしまっている場合がほとんどだ。通年掲出のステッカーはきれいに貼られている店舗でも、注意して見るとクリスマス用のものは気泡だらけだ。気泡はまだいいほうで、テスコのミニストアや、イギリス第二の全国チェーン薬局スーパードラッグでは、まだ11月なのにすでにかなり剥がれているサインもあった。粘着または自己接着タイプが採用されているようだが、短期使用であることと関係あるのだろうか。
ところで日本でよく見かけるスイングPOP類は、イギリスでは見ないと前から思っていたのだが、今回、スーパードラッグと、地方自治体が経営するレジャーセンター(運動施設)で採用されているのを初めて見た。スーパードラッグでは、透明なPET素材に印刷してあり、厚手の両面テープで貼るようになっていたが、のり残りするからか、陳列棚のレールに挟んで使用している。レジャーセンターのものは、印刷した紙カードに透明PETのアームをつけたタイプで、ここでは受付デスクの周囲やホールのはりなどに貼付して使用していた。
日ごろはメールやSNS等でのやり取りが主のイギリス人も、年に1度は一言手書きのメッセージを入れたクリスマスカードを送る。家族内でもカードを交換するし、職場の同僚に配る人もいる。このため箱入りのカードが多くの店に並ぶ。印刷だけのカードから3Dタイプ、ハンドメイド、レーザーカット入り、光る素材が貼付されているものなどいろいろだ。デザインも、聖書の一場面や季節の風景、芸術的なもの、東洋趣味など多種多様だ。大切な人宛てには個別カードを選ぶ人もいる。最近では、オンラインで独自のメッセージをいれるサービスもある。
友達や家族にプレゼントを買いそろえるのも一仕事だ。しかも自分でラッピングするのが普通なので、ラッピング用紙、粘着テープ、リボン、タグ、飾り付けの小物、包むのが面倒な人向けの手提げ袋等、これらもいろいろなデザインが豊富に出回っている。ラッピングで個性が出るが、すごくこだわって手の込んだラッピングをしても、引き破られ丸めてゴミ箱やリサイクルに直行するのが普通だと覚悟する必要がある。実家の母のように、包装紙をきれいに畳んでリボンも丁寧に巻いて取っておくイギリス人には、いまだにお目にかかったことはない。「あらかわいいリボン!捨てるのがもったいないみたい!」といいながらもすぐ捨ててしまうのが落ちだ。お目当てはあくまでも中身。これは誕生日等のプレゼントも同じで、カードとラッピング用品はカード専門店や本屋、スーパー、花屋、ブティック等に通年置いてある。スーパーやオンラインカード会社との競争に負け、イギリス一のカード専門チェーン店クリントンカーズは数カ月前に倒産。アメリカングリーティングス社に買収されたが、ラッピング素材とカード類を扱う店の多さから察するに、まだまだ大きなマーケットと言える。