25年前に渡英し、薬事翻訳業の傍らTullis Russell Coatersに勤務するガードナー・恵子が、消費者の視点からイギリスにおけるラベルの使用例と包装について、3回にわたり報告する。第3回は、イギリス北西部からの第3回寄稿では、RFIDラベルやパーキングの駐車券について報告しよう。
【RFIDラベル】
第一回に精肉でのRFIDラベル採用例に触れたが、RFIDラベルは電化製品や衣服等にも採用されている。一時はCD・DVDやひげそり、化粧品などでも多く採用されていたが、最近は、セキュリティータグ付きのプラスチックケースに商品を入れたり、直接商品にタグを付けたりというケースが増えている印象を受ける。タグ、ケース、ラベルのどれを使うかは、商品の形やサイズにも左右されるだろうが、陳列時にタグを付けて精算時に取り除くなどの手間による人件費と、RFIDラベルの価格のバランスも微妙なのだろう。スーパーは商品により使い分けしているようだ。
万引き防止のためには、対策がとられている事がはっきり分かる方が効果があるのだろう。セキュリティーラベルが付いていることを強調し警告するデザインのRFIDラベルが多い。また同ラベルは万引き防止の役割のほか、物流、履歴や在庫管理にも使用されるため、それが主な目的なのか、バーコードが印刷されているだけの値札ラベルと区別が付きにくい、RFIDタグ内蔵のラベルが付いている衣服もある。
【駐車券ラベル】
ロンドンなどの大都会で生活していない限りは車が無いと大変不便だが、車の駐車も面倒だ。私が住んでいる地域も含め、駐車料金を事前に払って表示する 「Pay and Display」 方式で駐車料金を徴収する地方自治体が多い。駐車する場合には、駐車スペースを確保してから駐車券自動販売機まで行き、希望する時間の料金を入れ駐車券を購入する。大都市では駐車料金が高く、携帯電話などで支払可能な販売機もある。
この駐車券は、裏面が剥離加工された感熱紙と、裏面に粘着加工された印刷済みのカラークーポンで構成されている。販売機のボタンを押すと、感熱紙に駐車場名、制限時間、日付等のバリアブルデータが印字されたクーポン付きチケットが発券される。車に戻り、印字情報が外から見えるように、クーポン面を剥がして裏の粘着面を露出させ駐車券とずらして窓の内側から貼る。クーポンの役割は、バリアブルデータが印字された感熱紙を貼ることだが、その表面は多色印刷されたレストランの割引券などとなっており、使用後は窓から剥がし、クーポンとして利用できる。
駐車している間に地域を担当する管理人が、制限時間を超えていないか定期的にチェックしに来る。制限時間が車の外から見えるように貼るのは駐車する側の責任であり、たとえ料金支払い済みでも券が剥がれるなど、何らかの理由で見えない場合には、駐車違反となる。駐車の仕方が悪い場合や、チケットが時間切れになったことが管理人に見つかると罰金の対象だ。予定より時間を超えてしまうと慌てて車に戻ることになるが、フロントガラスに黄色と黒の縞模様のビニール袋が貼ってあるとアウトである。袋には駐車違反通達書類が入っていて、袋の裏面全体または一部に粘着加工がしてあるが、念のためワイパーの下に挟んである場合も多い。違反金を早く支払うと罰金が安くなる場合もある。
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衣服や靴に貼られたラベルなど、あらためて日常生活を観察すると気付いた点が多くある。次回は特別編として、医薬品ラベルなどの現状を紹介する。
日本のラベル業界の皆さま、良いお年をお迎えください。