▼能登半島地震から1カ月が経過した。一部地域を除き電気が復旧、過酷な日々の中に復興への灯りがともり出す。他方で断水解消の道は遠く、水道管の漏水調査と修繕で時間を要する
▼報道で段ボールが間仕切りや簡易ベッドとなり、避難所を支える姿が映る。今年は暖冬とはいえ時に寒波が被災地に大雪を降らす。体育館など底冷えする空間で、緩衝材や断熱材となる姿が心強い
▼紙の器も同様。上下水道の復旧を待つ中、耐水性を備えた印刷会社製の組み立て式食器が使われる。普段は平面状に保管して非常時に組み立て、使用後は紙ごみで処分可能。人に使われ社会の役に立ってこその技術。紙加工技術が何とも誇らしい
▼全日本印刷工業組合連合会主催の「メディアユニバーサルデザインコンペティション」。今年の佳作にマンホールのふたをUD化した提案が入選した。「命を守る和~津波一時避難場所誘導型マンホール」は、鋳物鋳造会社でもスクリーン印刷会社でもなく商業印刷会社の発案だ
▼市街地のマンホールを避難所への誘導サインにする案に審査員は「街中すべてのマンホールがサインになると景観とどう調和するか」「曲がり角など要所要所に配したら有効では」。審査会は能登半島地震の前、今なら評価軸や寸評も違ったものになったか。なお同コンペの大賞は既報の通り大阪シーリング印刷だ
▼そんな同社の金字塔は、第9回大賞作品「避難所設営シールセット」。専用施設でない場所で専任者でない市民が取り仕切ることになった場面で、シールが情報を整理・集約して避難所に秩序を生み出す
▼シールやマンホーが人を導き、人を救う可能性を示す。紙加工に情報メディアと、印刷がアイデアを伴い新たな社会価値を実装し始める。切る、貼る、剥がす、巻く、示すシール・ラベルの技術が、これからどう使われ社会の役に立つのか。
(2024年2月1日号掲載)