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ハイ・アングル 2014年4月1日号

ラベルに変わる”モノ”の片鱗あり

能に演劇、映画、哲学…。学生時代に指導いただいた教授の興味関心は多岐にわたった。掲げる専門は「比較美学」。知った当初は失礼ながら中途半端な印象を持ったが、研究方法を説明するこんなくだりを読んで考えを改めた。「直接の研究テーマだけ調べても意義付けはできない。比較対象があってはじめて特徴が浮かび上がる」。結局、卒論の指導をお願いしたばかりか、一本の映画からいくつかシーンを切り出して比較するという着想までいただくこととなった▼対照的なキャラクターが登場し、お互いの特徴を際立たせる物語は枚挙にいとまがない。先日の「ガラスびんアワード」授賞式でラベルへの見識ものぞかせたリリー・フランキーさんが映画「そして父になる」で好演した、優しい半面金と時間にだらしない父親像も、その印象を強めていたのは、子どもとの接し方がぎこちないエリート役で共演する福山雅治さんの存在だった。自身が何者かを知るのは難しいが、客観的な第三者が評するにしても、判断材料の多くは相対評価、つまり別の何かと比較した結果である▼ここ数年間、約6000億円で推移している国内ラベル市場を上回る7000億円市場を誇りながら、直近の6年間でその約4割を急速に失った業界がある。ソフトを含む家庭用ゲーム機だ。原因は言うまでもなくスマートフォンの台頭。両者を合わせたゲーム市場は1兆円超と拡大中だが、最も身近な端末で遊びたいユーザーのニーズに、ゲーム機メーカーが応えきれていない▼激変するゲーム業界に比べ際立つラベル業界の平穏は、現状でもっとも簡便な手法を提供できていることの証だろう。ただ、一層手軽な仕組みが実用化されれば、雪崩を打ったような移行が進むことも想像に難くない。ラベルにとっての「スマホゲーム」予備軍は、もう姿を見せている。

 
 

 

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