▼全国各地で熱戦が繰り広げられた高校野球の甲子園予選。コロナ禍で制限があった一般来場が解放され、ブラスバンドによる応援も再開し美しい音色が響き渡る。夏の風物詩が戻ってきた中、思わぬ光景に目を奪われた。とある甲子園出場常連校の選手が帽子を取ると、サラサラヘアの姿が。17年前の高校球児で、大会前にはチームの士気を高めるべく、部員全員で五厘刈りにしていた筆者。固定観念で頭を抱えた
▼神奈川県シール印刷協同組合は、2019年から取り組む事業「ラベル原紙を作ってみる」で、リンテックの協力を得て新たなラベル用粘着紙を誕生させた。同ラベルの基材は、園芸用資材を扱う会社から提供を受けたもの。桃の生育過程で使われる果実袋だ。わら半紙のような質感でレンガ色の「アカレンガ」「シロレンガ」が、より意匠性を求めるブランドオーナーの選択肢を広げる。堀木淳一理事長は“既存の枠にとらわれず知恵を出し合った結果”と語る
▼商品のリニューアルに伴い、POPラベルやパッケージで環境配慮型素材を活用するブランドオーナーの存在が際立つ。ものづくりを続ける会社として環境配慮に向き合うのは命題という。ラベルやパッケージの材料を減らすだけでなく、商品の保護や表示の効果に期待を寄せ、環境配慮型素材“ならでは”のデザインを目指す。そのため各社の担当者は、新たなラベルの情報に耳を傾けている
▼この夏、柄付きマスキングテープ発祥の岡山県では、駅構内やクルーズ船をラッピングするなど、10会場でイベントを開催中だ。塗装スプレーをマスクしてきた素朴な同テープは、消費者の要望を受け、華美に磨き上げられたデコレーション商材として市民権を得た。固定観念を取り払えば、ブランドオーナーや消費者のニーズを満たすことも。新たな姿をまとったラベルの活躍を届けたい。
(2022年8月1日号掲載)