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ハイ・アングル(2021年8月1日号掲載)

▼「感動」とは、人の予想を超えたときに生まれる心の動き。かつて参加した会社説明会で人事担当が学生にそう語りかけた。1998年の長野冬季五輪、スキージャンプ団体の金メダル獲得を好例に感動の本質を説く。時を経て2021年夏。競技者のひたむきな姿は、感動の言葉がふさわしい。

 
▼日本選手の戦績も好調で、獲得メダル数が過去最高を更新すると目される。さてそのメダル、本大会では携帯電話など小型家電28品目を対象とした、リサイクル由来の金属から作られている。「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、19年夏に早くも目標量の回収を達成した。
 
▼オリンピック・パラリンピック合わせて金、銀、銅メダルは約5,000個必要だそう。あれほど小さな携帯電話1つからどれだけの希少金属が…と途方もない計画に映ったが、都市鉱山とはよく言ったもの。資源の有効活用と持続可能な社会の実現も叶えた五輪史上初の試みに、小さな感動を覚える。
 
▼首都圏の一部イオンで5月から展開中の「Loop」。高耐久な容器を回収、洗浄、充てんと再利用する流通プラットフォームは、今月からECサイトの実証実験を開始する。これに併せて6社13品だった対象に味の素やキッコーマン、資生堂も加わり本格始動へ一歩近づく。使用後の容器回収時、ラベルを貼ったままでよいのもユニーク。ラベルも回収してリサイクルする、まさに循環(ル ープ)だ。
 
▼政府は50年までにカーボンニュートラルの実現を宣言。限られた資源を繰り返し利用することで、資源循環と経済成長の両立を目指していく。ラベルや包装に用いる素材も、資源循環まで見つめた設計を求められる日も遠くない。脱炭素という人類未踏の道程は、予想をはるかに超える大転換が待つ。無数の障害物を越え終わりなき長距離走の果てに、“感動”を何としても実感したい。
 
(2021年8月1日号掲載)

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