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ハイ・アングル 2013年11月1日号

偽造表示多発でラベルはまた悪者か?

 今年9月の日印産連「印刷の月」で企画された、言語学者の酒井邦嘉・東大大学院教授と女優の中江有里さんによる対談は非常に興味深かった。電子書籍に対する紙の本の必要性に言及する中で、酒井教授は「紙もハイテク」と利点を指摘する▼例えば考えをまとめる時。机上に書籍や資料を並べ、必要に応じて簡単に情報量を倍加する。それを自由に読み比べてみたり配置を替えてみたりして紙と向き合う。全体を眺めることで矛盾やつながりに気づき、新しい流れが見える。〝そこにあり続ける〟紙媒体には本来多くの情報を留めていることに気付かされる▼海外のある雑誌が過去1000年で人類に最も貢献した発明を調査したところ、1位はグーテンベルクの活版印刷術だったと金羊社の浅野健社長。人類は思いや情報をより多くの人に伝達する手段を得たことでルネッサンス、宗教改革、産業革命と歴史が動いた。中面でも報じる印青連ドリームで同氏は後進に説く。「メディアに関わるわれわれはこれからも責任と使命を果たしていくと同時に、間違った使われ方をしないよう心がけなければ」▼われわれがどれだけ紙媒体の力を信じて印刷に精進し、また情報伝達の担い手としての使命感を持っていても、食品表示偽装という社会を裏切る行為の片棒を担がされてはたまらない。「今年の漢字」で『偽』が選ばれた2007年にも劣らぬ勢いで、誤表示と偽装の発覚が後を絶たない。当時と違い賞味期限の改ざんという直接健康被害には至らないのが唯一の救いか▼装丁に帯と、書籍は「作家と出版社の文化的メッセージの集合体」と酒井教授。商品に対する包装やラベルも正に同じ。そんなラベルはどうやら当面は紙媒体として存在しそうだが、電子化の脅威とは別の悩みが依然横たわる。ラベルはまた悪者か? 実りの秋のまったく食えない話である。

 

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