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寄稿 シニアソムリエ 石田通也氏 ④ 「ワインラベルとetiquette(エティケット)」

ラベル新聞2013年10月1日号~毎月1日号に連載「過去記事プレイバック」
今回は前回からの続きで、「ラベルのスタイル」の後編になります。
 
権威主義と実質主義
 
前回、「ラベルの傾向」で権威主義と実質主義について触れましたが、権威がなければ社会的秩序は維持できませんし、むろん、実質が重要である事に越した事はありません。できれば実質を伴った権威である事が一番良いのですが、過去の歴史から見ても全てがそうならないのは、人間社会の歯がゆいところです。どちらが良いか、という事は言えませんが、現在、わが国で社会問題になっている食品偽装、表示偽装、ラベル偽装などは権威主義の成す最たるものではないでしょうか。
偽装した側はもちろん全面的に悪いのですが、ここで問題なのは、偽装した企業や店をたたいているばかりで、その物を何の疑いもなく消費していた消費者側の意識です。ましてや、高級食材とされているものであれば、有り難がって食べていたのではないでしょうか。むろん、食のプロではない限り、その判断は困難かと思いますが、商品の対価は消費する側の満足度にも影響します。消費者の信頼を裏切った偽装は大前提でいけないとして、おいしいと思って喜んでいたにもかかわらず、偽装だと分かると翻ってたたき始めるのは、少々滑稽な気もします。自分の感覚をしっかり持ち、権威に盲従しない自身のをしっかり認識する事が大切ではないでしょうか。
そうは言ってもアジア人、特に日本人は、欧米人の個人主義とは違い集団意識が強く、個人個人の感覚や考えをハッキリと主張する事が苦手な民族で、個人嗜好を主張するのは難しい部分もあるかも知れません。故に権威に頼ってしまうのですが、社会性としては良いものも、権威に頼らざるを得ない精神性は微妙な気もします。要はラベルや表示に盲従したとしても、その物が良いと思ったなら、何かあっても後からコメントをあまり翻さない方が、その人自身のためではないかという事です。
ちなみに昨今の日本人は個人主義化が進んできたと言われますが少し違う気がします。核家族化を始め若年層の自己権利の主張など、一見個人主義にも見えますが、どちらかと言うと「他者に関心がない」とか「コミュニケーションが面倒」など排他的な感覚が見受けられます。個人主義とは他者を尊重し、自己権利を主張する前に義務を果たした上で成り立つものです。他者との接触は少なからずストレスを生じさせるもの。それを「面倒だ」「興味がない」と避けているのは、個人主義ではなく単なる逃避か甘え、精神的怠慢ではないでしょうか。「ナンバーワンにならなくてもいい♪」とは、少なくとも何かでナンバーワンになった人間か、そのための努力をしてきた人間の言う言葉だと思います。
 
本物と偽物
 
ワイン業界でラベル偽装や偽物が多いのは何と言ってもロマネ・コンティです。以前は、シンジケートまであったとの事でした。昔はロマネ・コンティの空びんに安ワインを詰めて売っていたようですが、それではすぐに足が付くため、ラ・ターシュという同社の隣の畑で、ロマネ・コンティによく似ているとされるワインを詰めるところもあったそうです。これでは並べて比べれば判りますが、単体ではセラーマスターでも判断が難しい状況に。そして価格は本物が5〜8倍するため、利益は十分ながらより足が付きにくいという巧妙な手口なのです。ちなみにバブル全盛期の日本で、一年間に消費されたロマネ・コンティは5千本とも言われています。しかし同ワインの生産量は、年によっても違いますが6千本前後。販売形態がアソート販売(1ケース12本中一本のみロマネ・コンティ)のため、とてもあり得ない数字になります。たくさんの偽物を飲まされていた日本人と、大切な信用を失墜させられたロマネ・コンティ社双方にダメージがありました。今では偽物との区別ができるように、会社上層部の一部しか知らない極秘の工夫を、ボトルやラベルに施しているそうです。
絵画を始めとした芸術作品や工業製品の中には、より精巧なフェイクを造ろうとして、遂には本物を超えてしまったという落語のような話しがあります。オリジナルは大事ですが、受ける側がどう捉えるかも重要です。しかしながら、誰かが地道に、凄まじい努力をして培ってきたブランド(信用)を安易に偽装し、私腹を肥やす行為は、道徳的にも許されざる行為だと思います。
 

著者:石田通也氏

1970年、長野県明科町(現安曇野市)生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校で料理を学んだのち、㈱プリンスホテルへ入社。各レストランに配属されサービスを学ぶ。「シニアソムリエ」「きき酒師」「ビアテイスター」などの資格を持ち、05年には、「第4回全日本最優秀ソムリエコンクール兼第12回世界最優秀ソムリエコンクール日本代表選考会」でベスト16に。現在は、長野県松本市深志のフレンチレストラン「Le SALON(ル・サロン)」オーナーとして活躍する傍ら、ホテル、レストランのイベントプロデュースなども手がける。11年に㈳日本ソムリエ協会技術委員・上信越支部地域委員、同年、長野県原産地呼称管理制度日本酒・焼酎官能委員に。

 
 
 
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